2021/12/29 (Wed) 17:57:53

【読書】2021年の総括と年越し本 - IKUNO

毎年年末に、その年の読書の総括をしています。
それでは今年の総括です。

■今年の総括
今年読んだ冊数は10冊、6作品でした。
去年は7冊、5作品でしたので、ほぼ去年と変わらない読書数でした。
去年もそうですが、今年も『騎士団長殺し』や『トリストラム・シャンディ』といった長編に時間がかかったこと、コロナ禍で外出機会が減り、移動時間が主な読書時間の私には読書の時間も減ったこと、が読書数減少の要因となります。
まだしばらくはこのような状況が続きそうです。

■手元に残した本
◯ 『騎士団長殺し』[全四冊](村上春樹)〈新潮文庫〉
◯ 『となり町戦争』(三崎亜記)〈集英社文庫〉
◯ 『トリストラム・シャンディ』[全三冊](ロレンス・スターン / 朱牟田夏雄訳)〈岩波文庫〉
◯ 『とらんぷ譚』(中井英夫)〈東京創元社〉
◯ 『猛スピードで母は』(長嶋有)〈文春文庫〉

■年越し本
ようやく『南総里見八犬伝』(曲亭馬琴)〈岩波文庫〉に着手することが出来ました。
随分前から読みたくて積読していた作品です。
全十冊ありますので、これでまた時間がかかりそうです。
2021/11/10 (Wed) 18:40:58

猛スピードで母は - IKUNO

『猛スピードで母は』(長嶋有)〈文春文庫〉読了。

「サイドカーに犬」「猛スピードで母は」の二篇収録。
どちらも子どもの視線で生活、特に大人を描いた作品で、「そういえば子どものころはこんなふうに見ていたな」と懐かしく感じた。
何気ない日常がごく自然に描かれているのも心地いい。(やや波乱含みの日常だが)
テレビで見る長嶋有のイメージとは違ってとても繊細な作品で、好感が持てた。

しかし、私は子どもが苦労する話に恐怖を覚える質で、心が苦しくなったことは否めない。
コメディな作品と聞いたような気がしていたが、実際は私にとってはちょっと違っていた。
2021/11/01 (Mon) 18:43:22

オーデュボンの祈り - IKUNO

『オーデュボンの祈り』(伊坂幸太郎)〈新潮文庫〉読了。

個性的で魅力的な人たちが、それぞれに何かしらの役割を持っているのがおもしろい。
役割には軽重があって、ルールとして存在している人すらいる。
特殊な世界線だが、リアリティもあり、もっとこの世界のことを知りたいと思った。

ただ、いろいろ説明がくどいようにも感じられるし、細かい説明がうまく働いていないようにも思った。
その点が私の好みではなかったのが残念。
この先、この作者の作品を読むかどうか悩ましい。
2021/10/04 (Mon) 21:28:21

とらんぷ譚 - IKUNO

『とらんぷ譚』(中井英夫)〈東京創元社〉読了。

13の短編からなる四つの作品で構成された作品集。
さらにジョーカーに見立てた二作品を含み、全体でトランプとして完成している。

首尾一貫していない作品も多く、トランプの構想には無理があるんじゃないか、とも思ったが、それぞれの作品はスペード、クラブ、ハート、ダイヤのイメージで統一されているとのことで、もう一度読んで確かめてみたくなった。
2021/07/17 (Sat) 16:20:12

トリストラム・シャンディ - IKUNO

『トリストラム・シャンディ』[全三巻]
(ロレンス・スターン / 朱牟田夏雄 訳)
〈岩波文庫〉
 読了。

とにかく人を食った作品。
真っ黒なページがあったり真っ白なページがあったり。何も書かれてない章があったり飛ばされた章があったり。
飛ばされた章の次の章には「なぜ前の章は飛ばしたのか」が説明されていたり。
内容も脱線ばかりで、何の話をしてるのか段々分からなくなってくる。

1760年から1767年にかけて発表されたが、当時大好評でロレンス・スターンは時代の寵児になったらしい。
よく受け入れられたものだと思う。

しかし実際に読んでみると、結構面白い。
話の筋とか伏線がどうとか気にせず、作品自体を楽しめる方には十分お勧めできる。

なにより「訳者まえがき」が面白い。
きっと朱牟田夏雄氏は作者に負けず劣らず面白い方なのだろう。

三月から読み出してようやく読み終えたが、楽しい読書だった。
2021/03/06 (Sat) 17:35:37

となり町戦争 - IKUNO

『となり町戦争』(三崎亜記)〈集英社文庫〉読了。

「戦争」というのは何かのメタファーだと思い、コミカルな内容を想像していたのだが、本当に戦争で、アイロニーに満ちたストーリーだった。

もちろん僕たちは戦争を「否定」することができるし、否定しなければならないものだと感じている。(中略)では、「現にここにある戦争」を、僕たちは否定することができるのであろうか?
(P92-93)
という言葉は、本当にその通りだと思う。

軽い読み物を、と思って読み始めたので、ダメージがデカかった。
次に読むものは軽いものでありますように。

作者の名前から女性かと思っていたが、男性にとって都合の良さそうな女性が出てくるので「もしや」と思って調べると、男性らしい。
ちょっと、ラブロマンスはもう一つだったかな。
2021/02/20 (Sat) 17:40:58

騎士団長殺し - IKUNO

『騎士団長殺し』(村上春樹)〈新潮文庫〉読了。


※ 内容に触れますので、嫌な方は読まないでください。


これまでの村上作品とはずいぶん違った印象を受けた。

何かを失った主人公がそれを取り戻そうとするストーリーがこれまでは多かったと思うのだが、この作品は、失ったものを取り戻そうとする人を主人公が助けるストーリーがメインだ。
そのためか、主人公の身の回りに起こる非日常的なアイテムは、かなり現実的なものとして現れる。
また、いろんなことを言葉で説明しようとしているように感じられる。

どういうことかよく分からない、ギリギリのラインを描いている作品が好きだったが、この作品はちょっと私の好みからは外れたようだ。
2020/12/30 (Wed) 08:18:01

今年の総括、手元に残した本、年越し本 - IKUNO

今年もあと二日となりましたので、今年の総括、手元に残した本、年越し本を投稿します。

■ 今年の総括
今年読んだ本は全部で5作品でした。
普段は毎年30作品以上は読んでるのですが、昨年の13作品よりも一段と少ない年になりました。

これは、昨年の年越し本に選んだ『伊沢蘭軒』[全二冊](森鴎外全集)〈ちくま文庫〉を読了するのに七月半ばまでかかったこと、その後も『金瓶梅』[全二冊](笑笑生/土屋英明訳)や江戸川乱歩全集第8巻といった大部の作品を多く読んだこと、が理由です。

そんな訳で、初めて読んだ作家も町田康(くっすん大黒)だけでした。
それでもこの作品は面白く読めたので、なかなかの収穫でした。

■ 手元に残した本
今年読んだ本で手元に残すことにした本です。
全集は除きます。

『くっすん大黒』(町田康)〈文春文庫〉
『きょうのできごと』(柴崎友香)〈河出文庫〉

■ 年越し本
今読んでいる『騎士団長殺し』[全四冊](村上春樹)〈新潮文庫〉がそのまま年越し本になりそうです。
本当は十二月中に読み終えて別の作品を年越し本にしようと思っていたのですが、思った以上に読むのに時間がかかってます。
2020/11/28 (Sat) 10:52:08

江戸川乱歩全集第8巻 目羅博士の不思議な犯罪 - IKUNO

『江戸川乱歩全集第8巻 目羅博士の不思議な犯罪』
(江戸川乱歩)〈光文社文庫〉読了。

表題作である「目羅博士の不思議な犯罪」は秀逸。
こういう作品を読みたい。
「地獄風景」も面白い。こういうの書きたいんだろうな、という感じがすごく伝わってくる。

その他、短編もあり未完もあり、解説にある通り「乱歩早分かり本」という感じがする。
初めて江戸川乱歩に挑戦したい、という方は、この作品集から好きな乱歩を探してみると良いかもしれない。
2020/10/22 (Thu) 19:01:46

くっすん大黒 - IKUNO

『くっすん大黒』(町田康)〈文春文庫〉読了。

読み始めてすぐ、その独特の文体がおもしろい。
主人公の一人称で、ぼやいたり毒づいたり、コミカルにストーリーが綴られていく。
奇妙な体験を共にする大学生も味があって、とても好感を持てた。
謎を謎のまま残したり、読者を放り出したようなラストだったりするところも私の好みだ。

正直なところを言えば、女性の造形が相当ぶっ飛んでいるところが気になり、途中からあまり楽しめなくなった。
しかし最後まで読んでみると、その不思議な世界観の中では決して違和感を抱くものではない、と思った。
ある意味、ユングの元型と言えるような存在なのかもしれない。

総じて、読む人をかなり選んでしまう作風だと思う。
併録の「河原のアパラ」も同じような印象だったので、これは作者独特の作風なのだろう。